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「勝ち組・負け組」って気になりますか
〜その心性の病理と日本の未来像〜

2004年11月



昨今「勝ち組・負け組」というコトバをなにかにつけ耳目にする。わたしはこのコトバが大嫌いである。昔「イン・アウト」というのがあった。これは流行りものを「新しい(=お洒落)・古い(=ダサい)」で二分するお遊びで、冗談として笑えたのだが、勝ち組・負け組はそれとは大分違う。一時の流行り言葉と思えばいいのだろうが、物事を優劣や善悪で簡単に二分して分かったような気になっている様が気にくわない。落伍者の烙印を押すような冷たさもある。人を「負け犬」呼ばわりするに至っては呆れてしまう。

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様々な事象を「あれはとこれはどちらがいいのか?、正しいのか?、得なのか?...等」という二項対立のフレームで片付けてしまおうという乱暴な心性は、薄ら寒さを覚えるとともに思考の幼児性を感じてしまう。世の中の複雑さは増しているように感じるし、毎日のように起きる問題事象は、いくつもの因果構造が交錯、複合化してもつれた毛糸玉のような様相で、「ああだからこうなった」的な単純さをもって説明、理解できることは稀である。そういった状況において、簡単に白黒付けてくれるリトマス紙に人々が心惹かれるのは無理からぬことなのか。

しかしなぜこうなってしまうのだろう?人智が及ばないほど社会構造が複雑怪奇に高度化してしまったのか、先が見えない不安、自信のなさがそうさせるのか、日々忙殺されて思考の余裕がないためなのか、欲ボケした企業やマスコミ、一部の個人に扇動されているだけなのか、それとも考える力が劣ったまま伸ばす努力も放棄した大人が増えているのか、あれこれぼんやり思う。どれも答えのようで答えになっていない。これも一義的に解けない事象であるのだけれど…。

臨床心理士である作家、矢幡洋氏は著書「自分で決められない人たち(中公新書ラクレ刊)」で今の日本社会を「依存性」というキーワードで読み解く試みをしている。癒しブーム、パシリ、電車の中で化粧をする女性、地べたに座り込む若者、子供の食事がわりにケーキを出す母親、決断しないトップ、会議で決めたがる上司、ウケ狙い、たれぱんだ、という諸現象に加え、群れたがる、個人になると弱い、権威に弱い、気配り重視など従来から日本人の特性として個別に論じられてきた気質を「(伝統的)依存性」そしてその変異体である「ネオ依存性」をキーに論じている。

依存性パーソナリティの説明の件では「いるいるそういう人!」と吹き出しそうになるが、読み進むうちに暗鬱になってくる。終章では、こういった依存性気質への傾斜が続いた結果としての日本の近未来社会像を述べているが、どれも既に現実化しつつあるように思えてならない。「中間管理職が育たずピラミッド型はむろんフラット型組織も機能しなくなる」「評価の定まった文化的権威に群がる傾向が強くなり、新しいクリエータの発掘育成というリスクある行為がおこなわれにくくなる」「反対運動などはまず起こり得ないので強権政治が横行する危険性が高くなる」「無能なくせにプライドだけは高くワガママな自己愛性格者が増える」…等々。

話を戻す。前述のような「リトマス紙」に人々が飛びつく現象もこの「依存性」が根底にあるのか。自分で考えるつもりも力もないから、誰かの判断に無批判に同調し寄り掛かる(=安心できる)という現象のひとつか。そう考えると昨今のブーム的な現象もそうなのかと思えてくる。最近のブームは以前のような富士山型ではなく、一気にピークに達して一気に終息してまう「茶筒型」になっており、これが経営判断の難しさを招いている一因であるという。しかし穿った見方をすれば、踊らせやすい人間を(意図的に大量につくって??)利用していたはずが、いつしか扱いに手を焼きはじめたという様にも見える。

マスメディアを眺めると、占い、霊視、ランキング、性格判断、成功ノウハウものの企画・記事がやたらと目につく。「あなたはこうですよ。だからこうしなさい」「これを買えば間違いない」「失敗しない…選び」「勝ち組になるための…」というメッセージの洪水である。これは冷静に考えると相当に気色悪いし腹立たしいことだ。裏返せば「あなたはおバカで自分で考えることも決めることもできないんでしょ」と侮蔑され「操作」されるようなものではないのかな。お遊びと分かって付き合う分にはいいのだろうが。

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最後に、矢幡氏が示す依存的傾向の簡単な自己診断法を紹介。それは「一人きりになったときに、どう感じるか?」ということ。「ああ、せいせいする。マイペースで好きなようにできる」と気楽に感じるのであれば依存傾向は低い(自立的)。「寂しい。心細い。人恋しい」と感じるのであれば依存的傾向は強いといえるそうだ。あなたはどちらだろう?

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

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