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他人のために本気になれる人
〜電車男と三丁目の夕日に想う〜

2005年11月



今回は今年印象に残ったテレビドラマと映画についてです。いずれの作品もすでに様々な所で語りつくされている感はありますが、あえて取り上げさせていただきます。

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一つは「電車男」です。当初話題になりはじめた頃、実はほとんど興味を持てなかったのですが、この夏に放映されたテレビドラマ版で、しっかりハマってしまいました。電車で酔客にからまれた女性を、いわゆるオタクの青年が助けたことから始まる恋。そして恋愛に弱気なオタクくんをネットの掲示板に集う「住人」が助言し励ますという物語。コミカルタッチではあったものの、主人公を演ずる伊藤淳史くんとヒロインである伊東美咲さんの演技が出色で、印象に残るドラマでありました。

どう考えても分不相応に素敵な人を好きになってしまった。常識的な判断ならあきらめるであろう恋に挑むオタク青年。相手に飾る事のない気持ちを伝えようとする主人公のセリフとともに、「きっとダメにきまっている」という彼を、全く見ず知らずの「ネットの住人」が我が事のように励ます言葉に、胸を打つものがありました。古くは「がんばれ!ベアーズ」という少年野球の映画にあったような、ヘナチョコだと自分も周囲も思っていた人間が、苦悩努力の末に想いを実現するという話と同じで、別段珍しい物語ではありません。そういった意味では古典的な感動物語に属するのでしょう。

しかしひとつ大きく違うのは、電車男の恋の行方を見守る「ネットの住人」という存在です。彼らはネットを通じて他人の恋心を、あたかも恋愛シミュレーションゲームをするかのようにもて遊んでいただけではないのか、という意地悪な見方もありますが、原作本に記載された言葉が事実とするなら、彼らは本気で書いているように思えてなりません。ひどく乱暴でふざけたような言葉や表現でありながら、非常に優しい気持ちを感じるのです。全くの他人事に本気で一生懸命になる。いま現実ではほとんどあり得ないのではないか、と思える彼らの言動が、このドラマの大きな魅力になっていると思います。

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もう一つは、昭和33年を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」。劇中のシンボルとして登場する、夕焼けを背景に建つ完成前の東京タワーという情景にひどく惹かれるものがあって、実に十数年ぶりに映画館に足を運びました。なかなか楽しい映画でした。当時を再現したセットとCG(コンピュータグラフィクス)の合成も実写のようによく出来ているし、ストーリー、俳優さんの演技も良かった。やや演技・演出過剰かなと思えるようなシーンもありましたが、許せる範囲でしょう。

映画を見終わってまず感じたのは、この時代は、日常にある小さなや幸せや感情を、家族や周囲の人と自然に共有・共感できていたんだなぁ、ということです。「今日の晩御飯はコロッケよ」と言う母親に「やったぁ」と喜ぶ子供。はじめて家に来たテレビを隣人と一緒に楽しむ。あったのを忘れて腐らせてしまったシュークリームにがっかりする。電気冷蔵庫を「なんで何もないのに冷えるのだろう」と家族でびっくりし合う。帰り道、立ち止まって夕日のきれいさに見とれる…。

そして、この映画でも、電車男でのネットの住人のように、我が事のように他人を思いやる人たちが登場します。ひょんなことから、身寄りのない少年を預かることになってしまった売れない青年作家。「おまえは縁もゆかりもない、赤の他人なんだ」と冷たくあたっていた彼が、やがて少年に心を通わせるようになります。親に捨てられたという心の傷を持つ少年も、彼の気持ちに呼応するように少しずつ心を開いてゆきます。

ある日、少年は友だちの誘いによって、大人達に内緒で自分の実の母親を捜しに行こうとします。大人達は夕方になっても帰ってこない少年たちを、誘拐されたと思い込んで大騒ぎに。やがて、必死になって捜す大人達のもとへ、二人がとぼとぼと帰ってきました。吉岡秀隆さん演じる青年作家は、友だちの親が叱るより先に、少年にビンタします。そして「心配させんな!おまえとは縁もゆかりもないんだからな」そう言いながら少年を強く抱きしめるのです。まるで本当の父親のように…。

この二つの作品について、先が読めてしまうほどありがちな展開なのに泣いてしまう、人のやさしさ、思いやる心に感動した、忘れてしまった何かを思い出させてくれた、などと多くの人が好意的に評しています。私も同様な感想を持った同時に、「他人のために本気になれるのって、とても素敵なことだな。でも、こういうことができる『大人』がいまの時代どれだけいるのだろう」、となんだか少し哀しい気持ちにもなりました。

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「電車男」と「ALWAYS 三丁目の夕日」。もしまだという方はこの年末年始にDVD、映画館で御覧になってみてください。おすすめです。なお「三丁目の夕日」に行かれる際は、ハンカチ、ティッシュをお忘れなく…。

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

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