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イノベーションの出発点
〜問題を捉え直す「視点移動」〜

2010年5月



人は見た目が9割、という本があったが、
これは人だけにあらず。
書籍にも当てはまる法則らしい。

「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」
ティナ・シーリグ (著)、高遠 裕子 (訳)
阪急コミュニケーションズ刊

給与減額という、トホホの身分でも
あいかわらず本だけは止められない。
ささやかな自己投資でも続ければいいことがあるかも、
という「スケベ心」は景気とは無関係に健在なのだ。

この書名。
手を出さずに我慢できる理由が私にはない。

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普通に考えると、
「知っておくべきこと」
でもいいはずだが、そこを
「知っておきたかったこと」という
後悔を学びに昇華したニュアンスがミソである。

少し前、「思考の整理学」という文庫の帯に
1986年発売以来の超ロングセラー、
“もっと若い時に読んでいれば…”そう思わずにはいられませんでした。
というコピーがあり、話題になった。

世の中、あきらめの悪い大人が多いということなのか。

でも「このまま終ってたまるかっ」という気概の大人が
まだ世の中にいる(捨てたものではないという)証左として
よしとしよう。

◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、「20歳のときに・・・」である。

著者ティナ・シーリグ女史は、
米スタンフォード大学工学部で、
起業家育成プログラム(STVP)を主宰している。

今から4年前。
自分が実家を出たとき、社会に出たとき
知っていればよかったと思うことを
やがて大学進学する自分の息子に
伝えておきたいと、思い立ったという。

そこで、社会で自分の居場所をつくるのに
不可欠だと思った事を覚書きに書き溜め続け
その後、同大学で「20歳のときに・・・」と題した講演をした。
それは大変評判となった。
この本は、その講演がベースになっている。

全編に通じるメッセージを簡単に言えば
自分の思考の枠やクセをいかに取払い、再構築するか、である。
なんだそんなことか、と思うだろう。

しかし、「そんなこと」が、
いかに実行できないことなのかという事例が
いくつも紹介されている。

◆◆◆◆◆◆◆◆

冒頭に「5ドルの挑戦」という象徴的な演習がある。

手元の5ドルを、二時間でできるだけ増やせ
というものである。

月並みな発想として、まずは
「ラスベガスに行く」、「宝くじを買う」といった
大きなリスクを取って(ごくごく低いチャンスに賭けて)
大金を稼ぐというもの。

次いで、5ドルで道具や材料を揃えて、
「洗車サービスをする」、あるいは
「レモネード・スタンドを開く」という
使ったお金よりも多少儲けようというもの。

しかし、彼女が教えた学生のほとんどは、
こうしたありきたりな答えのはるかに上を行く方法を見つけたという。
しかも、最も大金を稼いだチームは
5ドルには全く手をつけなかったという。

ヒントは5ドル(お金)である。

発想の起点が、5ドルであることが、
飛躍の幅を狭めることに気付くかどうかなのだ。

では、いったい何をしたのか?

◆◆◆◆◆◆◆◆

答えはCMの後で・・・というのも殺生なので
私が「やられた」と思ったアイディアをひとつだけ。
その他はぜひ本書で確かめてほしい。

最も稼いだチームは650ドルを手にしたという。

自分たちの使える資源は何なのか?
それは5ドルでも二時間でもない。
月曜日の3分間のプレンゼンテーションこそが一番貴重だと閃いた。

そこでスタンフォードの学生を採用したいと考える会社に
その時間を買ってもらったのだ。
プレンゼンテーションは本来自分たちの発表の時間なのだが
このチームは会社のコマーシャルを作り上映した。

優等生的な思考からは絶対に出てこない発想だ。
一方、日本人的には「なんかズルい」という印象もあろう。

◆◆◆◆◆◆◆◆

しかしだ。

イノベーションの出発点が、
こういったことにあるのではないかということを痛感する。

問題に突き当たったとき、その枠の中で
解決案を考え出そうとするのではなく、
それをもう一段、二段引いて俯瞰して
いったいどういう構造の中にある問題なのか。
問題を捉え直す「視点移動」が重要なのだ。

まじめに正面から問題に向き合うことも結構だが、
ときに、ふわっと思考を「幽体離脱」させてみる・・・。

飛び切り面白いことは、
きっとそのとき降りてくる。

・・・それにしても上手いタイトルだな。
この手法はいろいろ応用が利きそう。
「就職するときに知っておきたかったこと」
「結婚するときに知っておきたかったこと」
「家を買うときに知っておきたかったこと」

ほら、なんか読みたくなりませんか?

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

お願い

ここに記されている内容は、ウェブマスター藤川の個人的な意見や感想です。
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