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満足と幸せ
〜自分のなかの空っぽな「穴」〜

2010年11月



少し前の記事。
「カネで買えぬ?幸福感、年収7・5万ドルで頭打ち」
(読売新聞 - 09月07日付))」

内容はこうだ。

米プリンストン大教授、ダニエル・カーネマン氏が、
米国人45万人以上を対象とした電話調査のデータを基に、
年収と幸福の関係を統計的に分析した。
いわば「幸福は金で買えない」という通説の検証。

暮らしに対する満足度を10段階で自己評価。
評価の数値は、年収に比例して上昇する。
しかし、「昨日笑ったか」などの質問で測る「感情的幸福」の度合いは、
年収7万5000ドル(約630万円)前後で頭打ちになったという。
(ちなみに円高の今だと約900万円・・・結構いい額だ)

教授は「高収入で満足は得られるが、
幸せになれるとは限らない」と結論している。

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満足。何かを足るまで満たす。
しかし目標の達成(感)は点でしかない。
その点は時間とともにすぐ過去へ遠ざかる。
だからまた新たな目標(達成感)が欲しくなる。
満たしても満たしても、埋まらない欠乏感。

それが「欲を満たす=幸せ」、という価値観が誤りである理由だ。

食べたいだけ食べても、
欲しいモノを欲しいだけ買い漁っても、
埋まることがない「心の穴」。

欲を満たすことでは、幸せになることはない。
欲を満たすことはできない。終わりがないのだから。

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古い短編SF小説を思い出す。
小松左京氏の「兇暴な口」という。

自分で自分を食い尽くす、一部始終を録画する男の話。
自分の脳味噌にスプーンを挿し、口に運んだが
味はもうわからなくなっていた・・・で話が終る。

欲の追求の愚かさ、おぞましさを
自分の肉体を調理して喰うという行為で置き換えた。

喜劇王チャップリン曰く。
人生には夢と希望と、少しのお金が有ればいい。

「ハゲタカ」という映画のモノローグ。
誰かが言った。人生の悲劇は二つしかない。
金の無い悲劇。そしてもうひとつは金のある悲劇。
というのもあったな。

◆◆◆◆◆◆◆◆

10年前、当社の情報誌(休刊中)の編集後記に
新しいミレニアムの最大のテーマは「こころ」だ、と記した。

その時は、物質主義から精神主義へ、といった
かなり単純な構図を想像した。
精神の充足に軸足が移るのだろう。
しかしこの10年で、「そういうことではない」と気付いた。

物質主義はこれからも続くのだ。ますますと。
経済活動は物質主義そのものだ。
いまの世界は、経済を無視したら立ち行かない。
どんな崇高な思想も、万人の空腹を打ち消す事はできない。

大量生産、大量消費ができなくなるような
大規模災禍、戦争など壊滅的な出来事が起きるまでは。

◆◆◆◆◆◆◆◆

ひもじくても、心が満ちればよい。
これは嘘だ。ぜったい無理だ。
未来永劫にない。

モノの多寡に惑わされない。
己の(物質)欲を、無視せず、また横暴も許さない。
これだろう。

適度に自分が自分の欲を許す。

だが実際のところ、かなり難しい。
どこまで許していいものか。
禁欲、強欲はとっても簡単。
全部ダメか全部オーケーなんだから。
判断が要らない。

絶妙なセルフコントロール。
言葉は簡単だが、それが出来る人間が
果たしてどれだけいるか。
自分の中に、考えとしての「基準」がないとできない。
しかも、その基準に偏向がないのだ。

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しかし世界は、そうはさせじとしているようだ。

本物の「大人」になるヒント(曽野綾子著)
テレビは見てはいけない(苫米地英人著)
ガタクタを捨てれば自分が見える(カレン・キングストン著)
節約の王道(林望著)
フリー <無料>からお金を生み出す新戦略(クリス・アンダーソン著)

これらを読むうち、
わたしたちは、自分が何を本当に欲しているのか
どうなりたいのか
実はよく分かっていない、
まともに考えていないのだなと思った。

これがしたい、あれが欲しい・・・
それは、何らかの外部的な刺激に反応しているだけ。
しかし当人はそう感じていない。
そこが怖いところだ(これを洗脳というのか?)。

◆◆◆◆◆◆◆◆

本当に自分で考えたことなんてあるのか?
こだわりだの、ポリシーだのなんて
もしかしたら、というかよくよく考えれば
ぜんぶ借り物。

私は自由に生きている、と思っていたら
実は、うまいこと操作されている・・・。

もっとも、死ぬまで「それ」に気付かなければ
それはそれで幸せなことかもしれない。
自分に空っぽな「穴」があいたままだったとしても。

適度に欲を満たすことで、
自分の内面の「穴」にフタをして、
気付かぬふりもまた、生きる知恵か。

この穴は底なしだから、
覗き込むには相当な勇気が必要なのだ。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「生きている穴」という小説もあった。
これも小松左京氏。

ある日、家の地下室に「穴」ができる。
穴の向こうは真っ暗で何も見えない。
やがて、あらゆるところに穴が空き始める。
それは、やがて自分の体にも。
穴をのぞくと、中はまっくらで、
奥から、冷たい風が、かすかに吹いてくる・・・。

怖いな・・・。

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

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