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考えない人
〜文字コミュニケーションと想像力〜

1999年10月



日本語(作文)は得意ですか…? 「あらためてそう問われると自信がない」、という人が昨今は多いのではないかと思う。巷では「日本語練習帳」という新書がベストセラーになっているが、これはまさにその裏付けのように思える。

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かくゆう私も、実は「自信のない」一人である。企画・デザインという仕事は、文章を書く機会が比較的多い方の職種である。しかし本音を言うとコピー(文案)はあまり得手ではない。そして近頃、その苦しみ(?)に拍車を駆けているのがEメールなどのデジタルツール。昔はそれこそ企画書を書く時ぐらいしかキーボードを叩くことはなかったのだが、今は連絡や報告、フォーラム(電子会議室)等で、四六時中、文字を打ち込んでいる。

口で話せれば簡単なことが、いざ文字で伝えようとすると難しい(また、時間を取られる!、疲れる…)、と感じることが少なくない。先日もNHK の「クローズアップ現代〜ビジネスは日本語が決め手〜」という番組で、文字コミュニケーションの難しさを取り上げ、製品パネルの表記、マニュアル、電子メールでの顧客サポートを題材としてレポートしていた。そしてその裏側に「決め手」どころか、一歩間違うと「命取り」という、実は重い問題を含んでいる事を感じた。

コミュニケーションが「文字寄り」になってくると、会って口頭で伝えれば、それこそ阿吽の呼吸で(一応)意思疎通できたものが、なぜか文字になった途端、誤解や誤認、すれ違いが起きやすくなるようだ。常識的に考えると、文字にした方が間違いが少なくなるはず、なのにである…。理由は種々考えられるが、主たるものは「言葉にする訓練」と「想像力」の不足ではないかと思う。

「言葉が足りない、何を言いたいのか分からない」文になってしまうのは、訓練不足、翻って書籍(マンガ、雑誌ではない)を読んでいない事に尽きる。そして今の「ビジュアル偏重」の風潮である。全てがお手軽で、見て分かりやすい方が良いという風潮は危険に思う。見たままスグ分かるということは、見る側の思考停止(考えない)につながりかねない。これがやがて想像力の「欠損」を引き起こすのではないだろうか。相手の状況や心理を想像しながら、伝えたい事の表現や語句を選び、文章をつくるべきところが、想像力の「欠損」によって、一方的な言いっ放し=言葉足らずで意味不明瞭、または反対に言いたい放題になってしまうのではないか。上記の番組の電子メールでの顧客サポートは、その例であったように感じる。

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スピードを求められる現在のビジネスで、「見てスグ分かること」の重要性は理解できる。しかし、その効率追求の結果が「考えない人」の大量生産ではあまりに悲しい。「考えない人」を生み出さない、また「考えない人」にならないために何をなすべきかを、それこそ「考える」必要がありそうだ。

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

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