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グッドデザインとアザラシ
〜付加価値と場の関係〜

2002年10月



8月の終わり、東京ビックサイトで開催された「グッドデザインプレゼンテーション2002」という展示会を見た。これは、今年度グッドデザイン賞の審査対象となった製品を一同に集めた、いわば内覧会である。この会の目的は、各出典品に対する一般の評価を審査に反映させる、またデザインというものの価値や認識を関係者のみならず広く一般にアピールすることのようである。

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会場には、文具や衣類といった小物から、電気製品、家具、自動車、建築物、またソフトウェアやビジネスモデルといった無形物まで幅広いジャンルの製品が展示されていた。会場に入り、最初は物珍しさもあってあちこち見入ったりもしたが、実は途中から飽きてしまった。出典品には既に店頭やTVコマーシャルで見かけたものも多く、新鮮さが薄いせいかとも思ったが、どうも理由はそれだけではない。

会場にある全てが、今風のデザインを意識してつくらたもので、それが会場では「あたりまえの存在」になっている。これらのものが一般市場に置かれれば、たちまち精彩を放つ存在になるのだろう。しかしこの会場はみんなが精彩を放つ存在なのだ。飽きてしまったのは、どうやら「カッコよくデザインされたもの」に途中から慣れてしまって、一種感覚が麻痺してしまったためなのかもしれない。

グラフックイコライザというものがある。低音域から高音域までの各周波数成分を任意に設定するためのオーディオ機器だ。通常は各周波数のスライダーを上下させて特定の音域をカットしたり強調したりして、メリハリや意図を加えるために使用する。ところが、効果的な使い方を理解しない人がこれを使うと、迷った末に全てのスライダーを上限に揃えたりする。これは単に全帯域の音量が上がるだけで意味がない。会場は「全てのスライドバーが上限に揃った」ような状況だった。全体は確かにハイレベル。しかし、会場内の個々の「相対差」は感じにくくなってしまったのだ。

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モノの価値は場と相関がある。同じモノなのに居場所によって、ありふれた存在になったり、注目を浴びたりすることはよくあることだ。昨今は付加価値をいかに生むかが大きな関心事になっているが、その思考の前提が「同じモノを、同じ場所で」となっていることが意外と多い。しかし居場所(または時間)を変えただけで、たちまち「差(価値)」を増大するようなモノは、まだまだありそうだ。水族館や北洋の海にいればただのアザラシが、「日本の川」にいるだけでアイドルになってしまうように。

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

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