HOME > コーヒーブレイク > 長寿社会の設計図

長寿社会の設計図
〜地盤があってもまだ上物がない〜

2018年1月



年末年始の長い休みは、いろいろな意味で
仕切り直し、棚卸しの好機である。
日々の忙しさにかまけて、
そのうちやろうと半ば放置していたことを片付けたり、
逆に気になっていたことに手を伸ばすのがいい。

私の恒例は「積読(つんどく)」の解消。
積読には、読まずに買って置いてあるだけでも
それなりの効用があるというが(「プライミング効果」というそうだ)
奥の方に埋もれてしまい「死蔵」状態になると
もはやそれは単なるゴミだ。

今回は、その積読解消の中から
面白いと思った本を紹介したい。

◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、ここ数年の私的関心事は「老い」。
個人的のみならず社会問題としての「超高齢化」に
誰もが関心を持たざるをえない状況にあろう。
とくにカウントダウンタイマーの目盛りが
またひとつ「カチッ」と減る正月は、老いの影が目に入る。
一休和尚曰く「門松は冥土の旅の一里塚」。これは慧眼だ。

昨年「人生の出口戦略」というトピックを上げた。
様々な形で老後対策が語られるが、
それらの多くは「災害対策マニュアル」ではないかと。
「老いは災禍である」を暗黙の前提にしている。
老いは望ましくないこと、避けたいこと。
否が応でも万人が経験せざるをえないこと。
しかし人も生き物。つまり自然物の一部とするなら
(自然)災害の一種と見ることも、
あながち間違いではない気もする。
老いはもはや「リスク」扱いだ。

だが理屈は理解できても
「対策マニュアル」はどう読んでも楽しくない。
年金がどうだとか、保険がどうだとか、相続がどうだとか・・・
実用知識として有益なことではあっても
読むほどに出るは「ため息」ばかり。
かといって「起きないことにして無視」もできない。
誠に困ったことではある。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「対策マニュアル」は「備え=安心」にはなるが
いくら読んでも「生きる指針」ましてや「希望」にはならない。
何かのときに損をしない、上手くやり過ごすためにどうするか
という最低限の話である。
(くどいようだが、だから無意味だという意図はない)
私の理想は、人生の終盤戦が「無難な消化試合」ではなく、
最終回まで勝敗がもつれ込むような「希望」で
満たされる日々になることである。

一方、全ての希望を叶えて思い残すことなく
最後の日を迎えることが理想のように思われることもある。
しかし自死でもしない限り、自分の死期にあわせて
希望残高ゼロ(希望成就率100%)にすることはできまい。
逆に最も避けたい状態は、希望残高ゼロのままで死を長く待つこと。
希望を持つこと自体は容易いが(思えばいいだけだから)
「その気になっている希望」が「いつもある」
というのが重要なのではないか。

お金、健康、人間関係等のHOWTOは、
希望を持つ気になるための基礎地盤(必要条件)。
「対策マニュアル」は地盤改良みたいなものかもしれない。
しかし上物(希望)の設計図はそこにない・・・。
日本の長寿社会の設計図には、地盤があってもまだ上物がないのだ。
私が見たい(欲しい)のは上物(希望)の画だ。

ということで、そのためにはどうしたらいい?
その設計図を描く参考になるかもしれないと思った3冊が以下である。

◆◆◆◆◆◆◆◆

LIFE SHIFT
100年時代の人生戦略
リンダ グラットン (著)、 アンドリュー スコット (著)、 池村 千秋 (翻訳)
東洋経済新報社刊

この本は2016年発行であるが、いまだに売れ続けているようだ。
これからは人生100年時代になる。
となると今までの「22年間の教育→40年間の仕事→15年間の引退」という
3ステージの人生設計の延長では、「引退期」が長すぎる。
現状の「超高齢問題」はここに集約できる。
そしてその解決はマルチステージ、
つまり「生涯学習、生涯現役」をいかに構築するかだと。

翻訳モノの常で、回りくどい表現や
日本人にはピンと来ない事例や例え話など
読みにくい、退屈な部分が多々あるが
内容としては非常に示唆に富んでおり、
頑張ってでも読む価値はある。

本の帯にこうある。
こんな生き方をしてはいけない!
卒業後すぐに就職し、ずっと同じ会社で働こうとする。
永続する企業を目標に起業し、すべてを仕事に捧げる。
休日をレクリエーション(娯楽)にあてる。

これに「ドキッ、私のこと?」と思ったあなたは読むべきだ。

◆◆◆◆◆◆◆◆

幸福の「資本」論
あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
橘 玲 (著)
ダイヤモンド社刊

この著者との最初の出会いは
『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』という本。
経済的独立を得るための指南書(HOWTO)であったが、
この本で、根拠のない「常識」や「普通」に流される愚行に
気づかされて以来、注目してきた著者の近著が
『幸福の「資本」論』である。

読むとわかるが、ベースにある思考は「LIFE SHIFT」とよく似ている。
これからはこれまでの人生設計(モデル)が通用しないので
幸福の土台となる「3つの資本(金融、人的、社会)」のポートフォリオを
(「LIFE SHIFT」では有形資産・、無形資産と表現している)
自分が望む人生パターンによって「組み替える」必要があるという主張だ。

超充、リア充、旦那、金持ち、退職者、ソロ充、プア充、貧困。
これからしばらく、人生パターンはこの8つがあるだろうと。
80年代のバブル期に「金魂巻(きんこんかん)」という
当時の人気職業を「マルビ(貧乏)とマル金(成金)」という分類で
パロディ化し解説するエッセイ?のような本があったが
それを彷彿させるものがあり、なかなか興味深い。

こちらは日本人の著作なので
「LIFE SHIFT」よりも親近感を持って読めると思う。
先に読むなら、こちらの方がいいかもしれない。

◆◆◆◆◆◆◆◆

傘寿まり子(1)〜(5)
おざわゆき (著)
講談社

3冊目は漫画である。実はこれは「積読」ではなく
昨年暮れに、Kindle版の1巻目が無料購読で
かつ表紙の妙に可愛らしいおばあちゃんのイラストが気になり、
(熟女趣味はありませんが)
「無料なら」と読んみたら・・・これが意外と面白かった。

内容紹介文はこうなっている。
ベテラン作家の幸田まり子は自分の家で息子夫婦、孫夫婦との間で住居問題が勃発。
老人の自分には居場所がないことを感じ一人家出を決意。
街中のネットカフェで暮らし始めるが・・・・・・?

この主人公、幸田まり子はなんと80歳(傘寿)だ。
80歳がヒロインの漫画?
それが家出?ネットカフェで暮らし?
なんとも無茶な設定で面食らうが、
読み進めると「これはアリかも・・・」と思えてくる。
マンガチックであるが、妙なリアリティを感じる。

非現実的、こんな老人いるはずがない、ファンタジーだ、
というドライな感想もあるようだが、私はそうは思わない。
思考実験的であるが、これからは、こういったご老人が増えても不思議ではない。
そして彼らのために社会(価値観)はどうあって欲しいのかを
この漫画は示しているようにも思える。
私は好きだな、この漫画。

この作品は連載中なので、
しばらくの間、展開を楽しみにできそうである。

◆◆◆◆◆◆◆◆

先の2冊は、どちらかというと「地盤改良」の延長で
地盤から家が描けるかもしれないという本。
漫画の方は、地盤はともかく「家のイメージ」を
膨らませてくれるような本(かなり破天荒だが)。

「お楽しみはこれからだ」。
1927年公開の世界初のトーキー(音声の出る映画)で
映画史上初めてのセリフとして有名になった一句である。
原文は、「Wait a minute! Wait a minute! You ain't heard nothin' yet!」
主人公のジャズシンガーが聴衆に向かって言う。
直訳すると「待ってくれ!待ってくれ!まだ何も聴いてないぜ!」。
その日本語字幕が「お楽しみ・・・」であった。これは名訳だ。

いくつになっても、「お楽しみはこれからだぜ」と
明日が、来週が、来月来年が楽しみになるような「希望(企て)」を持つ。
仮にそれを果たす前に死んでしまったとしても、それはそれでいい。
「ああ、明日が楽しみだ」と言いながらオサラバする。
多額の預金を残して亡くなると「愚かで無駄」と指弾する声はあるが
(当人もおそらく無念だろうし、相続はほとんど国に召し上げられるし・・・)
希望には残高上限がない、青天井だ。課税もない(^^)。

最後の日の財布の中身は
レシートやポイントカードではなく
「希望」でパンパンでありたいと思うのだ。

菊水電子工業株式会社 ウェブマスター
藤川 貴記 webmaster@kikusui.co.jp

お願い

ここに記されている内容は、ウェブマスター藤川の個人的な意見や感想です。
帰属する企業、立場での見解ではありません。ご了承のほどお願い申し上げます。

ページトップへ ▲