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電源の基本原理について

4.交流安定化電源

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交流安定化電源は大別すると、単に出力電圧あるいは波形を一定に保つ目的のACスタビライザ(AVR)と、これに加えて出力周波数を一定に保つ(または可変する)周波数コンバータ(CV・CF)とからなります。

両者とも要求される仕様としては、出力電圧(周波数コンバータの場合は出力周波数を含む)の安定度が優れていること、入力電圧の波形に影響されず出力波形品質(歪率等)が良いこと、負荷の種類(力率等)に影響されることなく安定に電力を供給できることなど、直流安定化電源とは異なるさまざまな条件が必要となってきます。
一方、近年国内の商用電源ラインの電力事情は大きく向上し、高信頼、高品質の電力が供給されているものの、自然災害(雷、風雨雪等)による瞬時的な停電、電圧低下は避けられない実情です。また工場の生産ライン等では、種々の負荷が接続され、オフィスや住宅環境地区においても、コンデンサインプット形整流回路を持つ電子機器(テレビ、パソコン、OA機器等)の影響で、波形歪、ノイズ等を含んだ電力が供給されています。
このような電源ラインの異常に対してCPU搭載機器は停止したり誤動作を起こすばかりでなく、時には人身事故を起こす等、重大な社会問題を引き起こす要素も含んでいます。このようなトラブルを防ぐ目的では無停電電源装置が有効ですが、機器の製造メーカーにおいては電圧変動、停電等幅広い電源環境試験を行う必要があるため高性能で多機能なシミュレーション電源が要求されるようになっています。

以下に使用目的と性能の違いを中心に各種交流安定化電源の方式及び概略について述べます。

交流安定化電源の種類

ACスタビライザ(AVR)

・可飽和リアクトル方式
・鉄共振方式
・スライダック方式
・タップ切換方式
・位相制御方式
・リニアアンプ方式(電圧補正方式)


周波数コンバータ(CV・CF)

・リニアアンプ方式
・インバータ方式


以上の他に各種方式がありますが、実用化されていなかったり使用例が少なく、また、上記の可飽和リアクトル方式、鉄共振方式は近年あまり利用されなくなったため説明は省略します。

ACスタビライザ(AVR)

【スライダック方式】

《図-13》スライダック方式
《図-13》スライダック方式

入出力間にスライダックを挿入し、その出力電圧を検出し、いったん直流信号に変換してから基準電圧(直流)と比較誤差増幅し、サーボモータへ加えスライダック摺動子を動かすことにより出力電圧を一定に保つ方式です。この方式は効率が良く小型ローコスト化がはかられますが、機械的な動作を伴うので応答速度が遅く、また摺動子の寿命が短いため信頼性は低く、出力電圧の歪は入力電圧とほぼ同一となります《図-13》。

【タップ切換方式】

《図-14》タップ切換方式
《図-14》タップ切換方式

入出力間に多くのタップを持ったトランスを挿入しその出力電圧を検出し基準電圧と比較増幅し、トランスのタップ電圧をサイリスタやトライアック等の半導体スイッチで切換えることにより出力電圧を一定に保ちます。 この方式はスライダック方式に比べ機械的な動作がない為寿命も長く、効率が良く小型ローコスト化がはかられます《図-14》。

【位相制御方式】

《図-15》位相制御方式
《図-15》位相制御方式

入力電源をSCR等で位相制御して得られた電力を、LC共振回路等によるローパスフィルタを通して波形整形し正弦波を出力する方式です。出力電圧の制御は、前記スライダック方式と同様に直流信号同士の比較となります。したがってAC/DC信号変換部の時定数により応答速度はあまり速くできません。この方式も効率は良く比較的小型ローコスト化がはかれます。信頼性は高いですが発生歪は大きくなります《図-15》。

【リニアアンプ方式(電圧補正方式)】

《図-16》リニアアンプ方式(AVR)
《図-16》リニアアンプ方式(AVR)

入力電圧の電圧(波形)変化をリニアアンプにより補正して出力電圧(波形)を一定に保つ方式です。入力電源に同期した基準電圧(正弦波)を作り、出力電圧検出信号と比較し、その誤差分をリニアアンプで電力増幅し、入出力間に直列に挿入されたトランスにて電圧波形に瞬時補正をかける方式のものです。したがって出力電圧の安定度、歪率等出力波形品質は最も優れています。ただし効率、コスト面では若干劣ります《図-16》。

周波数コンバータ

【リニアアンプ方式】

《図-17》リニアアンプ方式(周波数コンバータ)
《図-17》リニアアンプ方式(周波数コンバータ)

入力電源を整流回路によりいったん直流電源に変換し、これをリニアアンプの電源として供給します。一方水晶発振器等から正弦波基準電圧を作り、これをリニアアンプの入力として電力増幅を行い出力する方式です《図-17》。
リニアアンプ部はその供給直流電源電圧により効率が大きく変化するため、位相制御回路あるいはスイッチング電源回路を用いて安定化します。適切な供給電圧を得るため、また入出力間の絶縁を図るため通常入力側あるいは出力側にトランスを設けますが、このトランスの挿入位置により出力波形の品質は左右されてしまいます。
出力トランスを用いることは、周波数特性、安定度、歪率等の特性を悪化させるためフィードバックループよりトランスを外した出力トランスレス(OTL方式)が理想的です。これにより出力トランスの飽和の問題がなくなり出力電圧、周波数を自由なタイミングで変化させられるので、電源ラインの異常シミュレーション(瞬停試験等)が行え、ATE等への応用が可能となります。
さらにはアンプ部の周波数特性を拡大することにより、歪波形等実情の商用電源ラインに近いシミュレーションも可能となるため今後発展性の高い方式でもあります。

【インバータ方式】

《図-18》インバータ方式
《図-18》インバータ方式

前述のリニアアンプの代わりにPWM(Pulse Width Modulation)スイッチング方式のDC/ACインバータを用いた方式で、このインバータ部の効率は非常に優れています《図-18》。また入力電源の依存性が少ないため入力電源は安定化する必要はなく特に入力出力間の絶縁の必要がない場合にはトランスを省略することも可能です。
したがって小型、高効率化がはかられます。ただし、スイッチング方式であるため、リニアアンプのように広帯域のフィードバックはできないため、十分なフィードバックがかけられず、出力電圧の品質はリニアアンプ方式に比べ劣ります。またノイズも大きくなる欠点があります。
しかしながら、半導体技術の進歩により高周波化が容易になってきたため、出力電圧品質の向上は比較的容易です。
この方式は省エネルギーの面から最も注目される交流安定化電源です。
なお、無停電電源装置あるいはインバータエアコン等のDC/AC変換部においてはすでにこのインバータ方式が主流となっています。また前項のACスタビライザへの応用も可能です。

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